前回の記事、「タンギングは舌だけの問題じゃないよ。」でタンギングの方法をまったくタンギングをやったことがないという方に向けて説明をしました。
楽譜に何も記号が書いていない場合は全てにタンギングをつけましょう
上の例のような譜面があったとします。
何もないときは基本的には音と音のすき間が空きすぎないようにタンギングをします。
このようにすべての音に「トゥー」と発音するのですね。音符に何も付いていないときは全ての音にタンギングをつけます。
この時、音と音のすき間はなるべく空きすぎないようにします。
このように音を十分に保って演奏する状態のことを「テヌート」と言い、下記の譜面のように記号で表してくれていることもあります。
テヌートの解釈で気をつけたいのは、タンギングをしつつなめらかに演奏する状態になるということですね。
タンギングをしないと後述するスラーの意味の演奏になってしまいますので注意が必要です。
また、テヌートで演奏する状態のことを「レガート」と言ったりしますが、「レガート」は本来は後述するスラーがついている部分でタンギングなしでなめらかに演奏することを意味するようです。
ただしこのテヌートと同じく、柔らかくタンギングをしながら演奏する意味で使われることも多く、非常に曖昧な音楽用語になっています。
スラーのついているところは頭だけタンギング。あとはタンギングをしません。
このような曲線の記号をスラーといいます。
どの楽器にも共通している意味としては「なめらかに」という意味ですが、特に管楽器の場合は「タンギングを付けずに演奏する」という意味合いになります。
ただしスラーのついている最初の音の出だしはタンギングをします。
このように最初の音だけ「トゥー」と発音して、あとは指が動くだけになるということですね。
スラーはサックス的にはタンギングをしないという意味で捉えてOKですがいくつか注意しなければならない場合があります。
【スラーの注意点1】同じ音が連続している部分はタンギングをする。
このようにスラーの中で同じ高さの音が2つ以上続いている場合があります。
このような場合はタンギングをして音の区別をつけなくてはなりません。
この譜面の場合、ソの音は2つともタンギングをつけることになります。
ただしその後のラとシの音はタンギングは付けません。
ここが難しいところですね。しっかりと吹き分けましょう。
【スラーの注意点2】スラーの切れ目ではタンギングをする。
「スラーの頭はタンギング」というルールに則ったものではあるのですが、わかりにくいのであえて注意点として挙げておきます。
上の譜例のようにスラーが途中で切れている場合はそれぞれのスラーの最初の音でタンギングをします。
このようにそれぞれのスラーの頭でタンギングをします。
あくまでタンギングをするだけですのでスラーの最後の音(ここで言うとラとドの音)が短くなったり減衰しないようにしましょう。
【スラーの注意点3】2つの同じ高さの音を結んでいるものはスラーではなくタイ。
この画像を見ていただくと上下に曲線が書いてあります。
これはそれぞれ違う意味の記号です。
上にあるのはスラー、下にある2つのラの音を結んでいるのはタイという記号です。
この2つの記号は全く意味が異なります。
スラーは「なめらかに」といった意味でしたが、タイは「連続する2つの同じ高さの音符をひとつの音符のようにつなげて演奏すること」つまり「音の長さがつながり」ます。
なのでここでは「ソラーシ」というように演奏しますね。
ただしタイは「連続する2つ」までしか有効ではありません。
それ以上の数の音の長さをつなげたい時は一つ一つつなげていきます。なので
例えばこの4つのソの音の長さをつなげたい時は
このように一つずつつなげないとタイとはみなされないということです。
このような表記の場合はタイではなくスラーです。
この場合同じ音が連続していますのでなめらかにすべての音をタンギングします。
ま、こんな表記は意味がない(わかりにくいし、テヌートで表記すればよい)のでお目にかかることはあまりないとは思いますが。
【スラーの注意点4】直後にスタッカートが来る場合はスラーの最後の音は短くなる。
話が前後しますが、このようにスラーの後ろに後述するスタッカートが来ている場合はスラーの最後の音が短くなります。ただしその短くなった音にはタンギングはつけません。
これは音楽の世界の慣習的な物なので「なぜ?」と聞かれても困っちゃうのですが、そういうものだと覚えましょう。
つまりタンギングはこのようになります。
これに関しては文章と図だけでお伝えするのが困難なため実際の演奏をご用意しました。
この図を見ただけではわからないという方はこちらの動画をごらんください。
スタッカート~音を短く演奏します。
話が前後しましたが次にスタッカートについて説明します。
スタッカートは「音を短くして演奏」します。
楽典の本によっては「半分ほどの長さにして」という説明がなされることもありますがそれは曲の時代やスタイル、ジャンルによって異なりますので明確な基準ではありません。
また「音を短く『切って』」というのも語弊があります。
どうしても「切る」と言うと極端に短くしてしまうので、ここはただ単純に音を短くするのだと覚えておきましょう。
音を強調して。アクセント。
このくさび型のような記号はアクセントと言います。
そのついた音符を「強調して」という意味です。
「強調して」と言われると色々な意味に取ることが出来ますがひとまず「その音を強く」吹けば良いでしょう。他の音よりもその音を大きく吹いてください。
名称不明瞭。効果も不明瞭。あなたはパルプンテですか。『^』
先ほどとは違う向きで付けられているこのくさび型の記号は色々な呼び方がされています。
- 山型アクセント
- アクセントスタッカート
- アクセンティシモ
- スタッカティシモ
そしてこの記号の効果も曖昧です。
- 「アクセントよりも強く」と捉えたり「普通のアクセントと同じ」と捉える『アクセント(>)』の変化形という解釈。
- アクセントとスタッカートが混ざった捉え方で「強く短く」演奏するという解釈。
- 「スタッカートよりさらに短く」という解釈。スーザのマーチなどではこの解釈で捉えることもあるそうですがこれはおそらく稀だと思います。スタッカティシモの記号も別に存在していますので・・・。ただし筆者が大昔に呼んだ楽典の本でこの記号がスタッカティシモだと説明しているものがあったような・・・。
この中で今現在、一般的な解釈なのは2の「強く短く」演奏するという解釈ではないでしょうか?
クラシックの世界ではアーティキュレーションの解釈はその曲が作られた時代や国や作曲家によって異なるため議論の対象になることが多いです。
なのでサックスをはじめたばかりの初心者ちゃんはそこにはとりあえず深入りせず、この記号を「山型アクセント」もしくは「アクセントスタッカート」と呼び、「強く短く」吹いてニコニコしておきましょう。とりあえず文句は言われません。
譜面に書かれている細々とした記号・・・アーティキュレーション
先ほどなんとなく使ってしまいましたが「テヌート、スラー、スタッカート、アクセントなどの記号やそれによる表現のこと」をアーティキュレーションと音楽の世界では呼んでいます。
アーティキュレーションは英語の本来の意味としては「はっきりと区切る」という意味があるそうですが、音楽の世界では先ほど申し上げた「記号やそれによる表現」として捉えたり「発音」の意味で捉えたりと幅広い意味で使われています。
非常に広範囲の物事について表している言葉なのですが、サックス奏者としては「アーティキュレーションを正確に演奏してください」と言われたら「タンギングをする場所を正確に演奏すれば良いのだな」と思っていただければ80%くらいは合っています。
アーティキュレーションは奥が深いですね。また続編を後日書きたいと思います。
以上が「アーティキュレーションの基本」でした!
この記事が皆さんの楽しいサックスライフのお手伝いとなれば幸いです。