レッスンをしていて短音階を取り上げることが頻度としてどうしても少なくなっていましたので、改めてここで解説をしておこうと思います。
短音階は実は奥が深いです。
そもそも短音階とは?
まずは短音階とは単純に説明するとなんなのかというところです。
短音階とは長音階の6番目の音からスタートしている音階です。
ハ長調で説明するとこの図のように長調との違いはスタートする箇所が違うというだけですね。
このように調号が同じ(スタートする音が違うだけ)長調と短調の関係のことを平行調といいます。
ただそのまま並べただけ。自然的短音階(ナチュラルマイナー)
上で説明したように短音階とは長音階の6番目の音から並べたものなのですが、そのままなんの工夫も施していないもののことを自然的短音階(ナチュラルマイナー)といいます。
吹いていただくとわかると思うのですが、この音階はなんか違和感があります。
それは最初の音(主音、ここではラの音)に戻る時になんかしっくりこないのです。
これを解決しているスケールが次に挙げる和声的短音階(ハーモニックマイナー)です。
ハーモニーの問題を解決。和声的短音階(ハーモニックマイナー)
長音階に慣れた耳で聞くと先ほどの自然短音階は最後のラの音(主音)に戻る部分でしっくりこないというか、終わった感じがしませんでした。
それもそのはずです。
主音に戻るときは半音で進行していないと終止感が乏しくなってしまうんですね。
和声的短音階ではその終止感の乏しさの問題を解決しています。
主音の手前の第7音を半音上げることにより主音に戻る流れをバッチリ作っています!
こうすることで音階に終止感が出来ました。
そしてこれはハーモニーの問題にも大きく影響しています。
色々すっ飛ばして説明します。
和声について最初から説明していくとキリがないのでとても簡潔に説明します。わからない人はここは読み飛ばして結構ですよ。
曲の終わりは主和音で終わることが多いのですが、そこに行く手前は属7という和音であることが多いです。
ナチュラルマイナーのダイアトニックコードにはこの属7(ドミナント7th)のコードが存在しないので終止感が生まれにくかったのですが、ハーモニックマイナーのダイアトニックコードにはこの属7のコードが存在するため、ドミナントモーションが出来るようになりハーモニーの上でも終止感が生まれたのです。
そのため「和声的」短音階という名前が付いています。
和声的短音階のアラビア感を解決。旋律的短音階(メロディックマイナー)
和声的短音階を吹いてみて、終止感は出ましたが「なんだかアラビアとかエスニックっぽいなー」って思いませんでしたか?
それはやはり西洋音楽の伝統の中でもそのように感じられたようです。
何が原因かというと
この部分ですね。
この増二度という音の幅(音程)の進行がアラビア感を出してしまっています。
そういう中近東的な雰囲気を出したいのであればこのままでOKなのですが(実際、アラブの音楽ではハーモニックマイナーは「マカーム・ナハーワンド」と呼ばれているそうです)西洋音楽をやる上ではちょっとまずいですよね。
なのでそのアラビア感を解決しているのが旋律的短音階(メロディックマイナー)です。
上行形では第6、第7音を半音上げる。下行形ではナチュラルマイナーに戻す。
この旋律的短音階では上行形と下行形が変化しています。
上行形では第6音と第7音が半音上がり
下行形ではナチュラルマイナーにもどります。
このように上りと下りで形が変化するのですが、ポピュラー音楽においては下行形が概念として使用されることはほぼありません。
クラシック音楽で解決感を得るために使用されることが大半のようですね。
しかし、上行形はポピュラー音楽においては様々なスケールに応用されて使用されています。その一つをご紹介します。
オルタードスケール(スーパーロクリアンスケール)
これは旋律的短音階(メロディックマイナー)の上行形の7番目の音からスタートさせた音階です。
この音階の事をスーパーロクリアンスケールというのですが、これは実はオルタードスケールという音階と同じです。
一般的にはこちらの名称、表記で用いられます。
ドミナント7thのコード上でオルタードテンションを用いる時の根拠となる音階です。
全てのオルタードテンション及びハーモニー上重要な1、3、♭7(7th)が含まれています。
大変だけど3つきちんと覚えよう!
以上の3つが短音階のバリエーションです。
ちょっと複雑ですがここで改めてまとめておきます。
長音階の6番目の音から並べただけの自然的短音階(ナチュラルマイナー)
第7音を半音上げた和声的短音階(ハーモニックマイナー)
上行形では第6、第7音を半音上げ,下行形ではナチュラルマイナーに戻した旋律的短音階(メロディックマイナー)
いかがでしたか?
ちょっと難しいですが繰り返し練習してマスターしてみてくださいね。
考えながら吹いているうちはまだダメです。
スケールは脊髄反射的に体が勝手に動くようになるまで繰り返し練習して覚えてこそ意味があります。頑張ってください。
この記事が皆さんの楽しいサックスライフのお手伝いとなれば幸いです。
ここまでお読みくださいましてどうもありがとうございました。