「サックスで曲を演奏して知人に聞いてもらったら『チャルメラみたいで味気ない』とか『棒吹き』とか言われて落ち込んでいます。歌心のある演奏が出来るようになりたいんですがどうすればいいでしょうか。」
こういった疑問に答えます。
本記事のテーマ
【中級者向け】サックスで歌うように吹くためのコツ~「やさしさで溢れるように」を例に解説
歌うように演奏出来るようになるための練習方法
- まずは実際に歌ってみる
- 全部の音にタンギングを付けない
- フレーズの中で強弱を付けてみる
- ビブラートを付けてみる
- 装飾音符を付けてみる
この記事の執筆者について
私、長内(オサナイ)は中学生の時にサックスを始めて、その後愛知県立芸術大学という大学でクラシックサックスを専門的に学びました。
卒業後はヤマハの大人向けのポピュラーミュージックスクールで講師として仕事をし、現在は私個人の音楽教室でサックスの指導をしています。
読者さんへの前置きメッセージ
本記事では「サックスを吹いていても棒吹きになってしまうし、味気ない演奏になってしまう」という方がどのような点に気をつけながら練習をするべきかという視点で書いています。
この記事を読むことで、ただただ楽譜を追うだけの演奏ではなく、楽譜に書かれていない細かなニュアンスまでも表現できるようになるためのステップをイメージ出来るようになると思います。
それでは、さっそく始めていきましょう。
今回題材にする曲
昨日私がYouTubeにJUJUさんの「やさしさで溢れるように」をサックスで演奏したものを投稿しましたので今回はそれを題材とさせていただきます。
楽譜・カラオケ音源はアルソ出版より出版されている「アルトサックスで吹く Love Songs ピアノ伴奏CD付」を使用しています。
【収録曲】
JUJU
やさしさで溢れるように
JAY'ED×JUJU
永遠はただの一秒から
JUJU
小さな恋のうた (MONGOL800トリビュートアルバムより)
他
①まずは実際に歌ってみる
歌うように吹けるために一番大事なのはまず実際に歌ってみることです。
それも「ドレミ」ではなく「歌詞」をしっかり付けて、カラオケでこの歌を披露するくらいのつもりでまずは歌ってみます。
こんなことを言うと
- 「歌が苦手だからサックスを吹いてるのに、歌なんかやりたくないよ」
- 「音痴だからあんまり歌いたくない」
という声が聞こえてきそうです。
いいんです。苦手でも音痴でもいいからまずはとにかく歌ってみましょう。
歌ってみる過程で気を付けること
その過程で以下のことに気を付けながら歌ってみましょう
- 高い音域と低い音域の喉や舌の使い方
- 抑揚の付け方
- どの音にアクセントが付いているか etc.
特に今日は1の「高い音域と低い音域の喉や舌の使い方」にフォーカスしてみましょうか。
歌っている時に口の中で起きていること
高い音域と低い音域では喉や舌の状態が変化するのはわかりますか?
高い音域では舌が上に向き口の中や喉の空間が狭くなりますし、低い音域では舌が下に向き口の中や喉の空間が広くなります。
実はこのことはサックスでも演奏中にやらなくてはならないことです。
今までサックスを演奏していてこんなことが起きたことはないでしょうか?
- 高音域の音程がぶら下がって、たまに1オクターブ下にひっくりかえる
- 低音域がひっくり返って1オクターブ上もしくはそれ以上の音域の音が出る。
この現象の原因の大部分はサックスを演奏しているときに音域が変化しているにも関わらず、喉や舌の位置が変化していないことが理由です。
つまり、
- サックスで高音域を出すときは高い声で歌っているつもりで
- サックスで低音域を出すときは低い声で歌っているつもりで
演奏しなければなりません。
こういったことからまず取り組む曲を実際声に出して歌うという行為は非常に重要なこととなっています。
②全部の音にタンギングを付けない
この曲の譜面はこんな感じで
まったくスラ―が付いていません。
これはポピュラー系の譜面には良くあることです。
上の譜例はサビの冒頭部分の譜面なのですが、ここで「トゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥトゥーーーーートゥトゥーー」と吹いてしまったらどうでしょうか?
まさに棒吹きの演奏の完成です。
曲や状況にもよりますが、この曲の場合は基本的にすべてスラ―で演奏した方が良いと思います。
〇スラ―で演奏ができない原因
例えば上記のフレーズの場合ですと、オクターブキーを押したファの音からオクターブキーを押さないドの音に移るときにどうしても音がうまくつながらないということがあるのではないかと思います。
またオクターブキーをまたぐ際に必ずタンギングをしてしまうという方も中にはいらっしゃるのではないかと思います。
そういう方は私が以前こんな記事を書きましたのでそれを参考にしていただけると良いのではないかと思います。
真ん中のドからレの動きが上手くいかない!という人のための5つのチェック項目
③フレーズの中で強弱を付けてみる
またまたサビの部分なのですが、ここの歌詞はこうなっています。
ここであらためてJUJUの歌を聴いてみてください。
よーく聞かないとわからないとは思いますが、「あ」の部分と「つ」のところにアクセントが付いています。
こういったことはおそらく実際に歌わないとわからないことですし、楽譜には書ききれないですね。
それにただ漠然と聞いていてもただ聞き流してしまうだけなので実際に歌ってください。なんならモノマネをするつもりで歌いこんでください。
やはり歌心っていうのは実際に歌うのが一番身につくものでもあります。
厳しいことを言うようですが①の項目で書いた「歌が苦手だからサックスを吹いてるのに、歌なんかやりたくないよ」などと言っているうちはサックスも絶対うまくなりません。
④ビブラートを付けてみる
これについては練習方法を昨日の記事で掲載しましたのでお読みいただければと思います。
いそしぎ(The Shadow Of Your Smile)をアルトサックスで演奏する際のポイント(サブトーン、ビブラートetc.)
ビブラートの入れ方には色々な種類があると思いますが
- 8分音符以上の音すべてにビブラートを入れる→クラシックなどではこのようにやる
- のばしている音の出だしから均等に波を入れる→ポピュラーでも割と使うが頻度は少なめ
- 音の終わりに少し入れる→これがオススメ
という感じです。
特に中級者くらいの方がビブラートを多用するのはまだ難しいと思いますのでこの曲ではフレーズの終わりなどで、2分音符以上のばしている音にちょっとだけ付けるくらいが品が良くてよいのではないかと思います。
⑤装飾音符を付けてみる
基本的には装飾音符を付けなくても歌うように演奏するというのは可能なのですが、小手先のテクニックとして装飾をつけてみるというのもアリです。
幸いこの譜面には装飾音符が付いていますのでそれをしっかりと演奏に入れてみるというのもアリだと思います。
装飾音符の入れ方に関してはこちらの記事で解説しています。
【難易度MAX】THE SAX Greatest Hits収録のLA・LA・LA Love Song(久保田利伸)の演奏のポイントを3つ解説
ただしこの装飾音符についてはあくまで「小手先」のテクニックでありますので、ここまで説明した①~④の項目をまずはしっかりと出来るようになった方がよいかと思います。
ということで本日は以上となります。
練習をする際に参考になれば幸いです。
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演奏に使用しているセッティング
マウスピース
H.Selmer SUPER SESSION アルトサックス D
リガチャー
リード
楽器
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ストラップ
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